2019.2月号
ナビゲーター/KANA & MAKI

佐賀県首都圏事務所 産業労働部 企業誘致セクション
「ベンチャー企業 Inaho」が鹿島市に進出
(イナホ、本社・神奈川県鎌倉市)


佐賀の農業に明るい光が差し込んできた。後継者問題などに苦しむ農家での作物の収穫作業に、AI(人工知能)搭載型収穫ロボットが登場することになったのだ。ロボットの開発を手掛けるのは神奈川県のベンチャー企業、inaho株式会社で、同社はこの度、鹿島市と進出協定を結び鹿島オフィスを開設した。


写真左側は、鹿島市・樋口市長で「一番先を歩いている農業機械に期待している」と述べた。 右は太良町の農家・安東浩太郎さん。昨年10月より本プロジェクトに先駆けてアスパラガスの収穫にて実証実験を行ってきた。その将来性に大いに可能性を感じているそうだ。本年5月からこのAIロボットは同社により150台が、アスパラガス・キュウリ農家に提供される予定だ。
同社はロボットを貸し出された農家から収穫高の15%を使用料として受け取るとのことだ。高齢化する農家の人的負担の軽減につながるこの取り組みは、逆に、規模の拡大にも期待されている。鹿島市を拠点に、AIという先端技術を使ったスマート農業という形態を加速させてくれるかもしれない。現在のところ、収穫の対象としてはアスパラガスやキュウリだが、将来的にはイチゴやトマトなどの他の産物にも適用できるよう技術改良を図っていく考えであることがすでに発表されている。

さて、inaho(イナホ)が開発したこのロボットは、収穫適期を迎えた野菜をセンサーで識別して自動で収穫する仕組み。アームの形を変えると、それに適した野菜の収穫ができる。使用対象農家の範囲としては、鹿島オフィスから車で約30分の範囲内に在する農家を対象と考えているそうだ。

Inaho株式会社
CEO 菱木豊さん


収穫ロボットで世の中を変えるという大きな夢の第一歩

ロボットについて

開発までの期間は構想から3年。農家さんから収穫作業が大変で困ってると聞いて、これを解消する何かを作ることができないかと製作に乗り出した。調整に一番苦労した点は、ロボットからの見え方、光の当たり方といった収穫適期の作物を認識するのが非常に難しかったと菱木社長。解決の糸口は、現場で何度も実証実験をしつづけた事が大きいという。

農家さんに協力してもらい、佐賀で1ヶ月間、合宿のような形で実証実験を続けたこともあるそうだ。また、正確に計算したことないが、この開発に要した費用は何千万円にも達するレベルだという。さて、このAIロボットはバッテリー駆動の全自動で動く。1分間に6本収穫することを目標としている。その上で、まだまだソフトとハードの両面において改善すべき点があるそうだ。しかし、菱木社長は「どちらとも改善していかなきゃいけない。難しい課題は間違いなくあるが、十分クリアできると思う。」と自信をもって答えてくれた。 

鹿島への印象

嬉野、武雄、太良など魅力的な農家さんが多く、非常に良かったと思う。佐賀はアスパラの収穫量が全国2位。色んな地域で女性の農家さんにもたくさん会ったが、30代でも収穫の際に腰が痛いという声をよく聞いてきた。このロボットによって肉体的負担が少しでも改善されれば嬉しいと思う。また、今後の農業の継続性を考えた時、例えば10年後って人を雇えるのか? といった農家さんが持つ設備投資することへの不安などを、弊社のロボットで解消できればと願っている。
菱木社長は調理師学校卒業後、不動産投資のコンサルタントを経て今に至る。農業経験も工学知識もまるでなかったが、農家さんの大変さを聞いて、そこにニーズを感じ、構想から創り上げてきた若手でやり手の実業家だ。出身は神奈川県鎌倉市、現在35歳。


写真(中)は、Inaho株式会社さんを鹿島に誘致した縁の下の力持ち、佐賀県首都圏事務所企業誘致担当の中島修課長。
名称

Inaho株式会社 鹿島オフィス

住所

本社:神奈川県鎌倉市材木座4-10-14

鹿島支店:鹿島市高津原5055

TEL

0467-37-527

HP

☞ Inaho株式会社 公式ホームページ

アクセス

肥前鹿島駅より車で約5分

武雄北方ICより車で約30分