取材日時/2021年4月13日
ナビゲーター/MAKI

「美味しい」のその先へ
〝食〟で伝える唐津の魅力


佐賀県唐津市和多田西山

「Y’S KITCHEN(ワイズキッチン)」は、2002年12月にオープンし、19年目を迎えたイタリアンレストラン。ランチ、ディナーともに完全予約制でコース料理のみを提供し、地元の方はもちろん観光客の方にも大人気のお店だ。今回、取材に伺ったことで同店の人気の理由を肌で感じ、気付けばファンになっていた私。

大切な方のお誕生日や記念日など〝ハレの日〟にぜひ利用してほしい、魅力たっぷりのイタリアンレストランなのだ。

 本日は、地元でとれた食材をふんだんに使用したランチコース(7,700円税込)を紹介する。

1品目 伊万里ホシユタカ、イカ墨


国産では珍しい長粒米「ホシユタカ」は伊万里産。もちもちとした国産米の長所と、リゾットなどに適する長粒米の長所を掛け合わせた「ホシユタカ」をイカ墨と和えてフリットにしている。手掴みでいただくこちらは、サクサクとした食感の中に米の甘みとイカ墨のコク、そしてそれを引き立てる絶妙な塩気が感じられ、辛口のスッキリとした白ワインが欲しくなる一品だ。

また、七山の和紙漉き職人が作る藁盆を用いた、他に類を見ない斬新な盛り付けにも心が躍った。

2品目 浜玉のグリーンアスパラガス


唐津市浜玉産のグリーンアスパラガスのフラン(冷製の茶碗蒸し)。マスカルポーネチーズの上に削られているのは、パルミジャーノチーズとサマートリュフだ。香り立つチーズとトリュフが心をグッと掴んで離さない。

全体をしっかり混ぜてから口に運ぶと、アスパラガスの旨味がブワっと口いっぱいに広がった。フランは、アスパラガスと卵、塩のみでシンプルに作れているため、素材の持つ旨味や甘味をダイレクトに感じる。そして、そこにチーズとトリュフの風味がそっと寄り添う一皿だ。幸せな気持ちになる美味しさに、感動のあまりほんの少し〝身震い〟した。

3品目 肥前町のコメイカ、玄海町のビーツ


コメイカは春と秋の産卵期が旬の食材。肥前町で水揚げされた新鮮な雌イカのお腹の中には、米粒のような卵が入っている。

人肌温度のぷるんとした食感が優しく、ビーツを使用した絶品ソースとハーブの風味がさらに食欲をそそる一品だ。

味のバランスといい、温度といい、食感といい、どこを取っても「完璧」の一言に尽きる。 

同店にはワインセラーが完備されており、お食事にピッタリのワインをセレクトしてくれる。赤、白、ともに種類が豊富なのでぜひスタッフさんに声を掛けてみてほしい。

4品目 北波多のスッポン、カペレッティ


「カペレッティ」とは〝小さなの帽子〟の意。唐津市北波多の漁師さんから仕入れるすっぽんを余すとこなく使用した逸品だ。

皮に包まれているのはスッポンの身。食感は蟹の身に似ているが、それよりも弾力を感じる。エンペラ(甲羅の縁の部分)も身と一緒にミンチにしてるため、コラーゲンもたっぷり。コンソメスープはスッポンと酒と塩と水だけとシンプルに仕上げられている。

「お肌がぷるぷるになるって想像しただけで嬉しいけど、それよりも何よりも、このスープが美味しすぎてたまんない。シンプルなんだけど、だからこそ感じられる旨味とかがギュッと凝縮してる感じ❤」と大興奮のMAKI。

5品目 肥前町のサザエ、カッペリーニ/6品目 自家製パン


肥前町でサザエを使用したカッペリーニ。自家製のカラスミが削りかけられており、芳醇な磯の香りは濃厚な肝のソースから。冷製だからこそ味わえる気品高い美味しさにぐうの音も出ない。

こちらは自家製パン。干しぶどうを使った酵母を1から作り、完成までに約5日かかるという大人気のパンだ。皮はパリッと、中はもちもちでぎっしりと詰まった印象。絶妙な塩加減がたまらなく美味しく、添えられたオリーブオイルは必要ないとさえ感じた。パンの種類は日によって変わるそうだ。 

7品目 鎮西町の甘鯛、春野菜


運ばれてきた香りだけでも春を感じる一皿。パッと目を引く黄色い花はハーブの一種「ディル」の花。甘鯛は皮目をパリッと焼き上げるうろこ焼きで仕上げてあり、身は切るというよりもホロホロと崩れるようにふわふわで柔らかい。
ソースには、ホワイトアスパラガス、新玉ねぎ、早生キャベツ、タケノコなどの春のお野菜がふんだんに使用されている。食べ進めるほどに春を感じる、旬が盛りだくさんの贅沢な一皿だ。

メインディッシュで使用するこちらのナイフは、大正初期から代々受け継がれている老舗金物屋、金田鋸店(嬉野)の商品。刃も柄も全て手作業で作られているため、世界にたった一つしかない一品物だ。

8品目 食後のお飲み物/9品目 北海道の金時豆、クリームチーズ


コースも終盤。食後のお飲み物は、珈琲、紅茶、エスプレッソの3種類から選べる。注文した珈琲は萩見窯(熊本)製の素敵なカップ&ソーサ―に注がれた。

続いて運ばれてきたのは北海道産金時豆を使用したデザート。グラッセされた金時豆の程よい甘さと、クリームチーズを使ったアイスの相性が絶妙。パリッと香ばしいクッキー生地の器を崩すと、なんと最下層にはチョコレートのムースが。

一緒に口に運ぶ組み合わせによって、色んな食感と味が楽しめる洗練された一皿。デザートタイムは、先程味わったコース料理の一皿一皿で幾重にも重なった〝感動〟の余韻に浸る時間だった。と同時に、この幸せなひとときが終わってしまうのかという悲しさで胸がいっぱいになる切ない時間でもあった。

10品目 小菓子

本日の小菓子は、ピスタチオのガナッシュが入った上品な味わいのマカロンと、アーモンドなど風味豊かなビスコッティ。季節によって内容は変わるとのこと。

中江 義行さん
Y’S KITCHEN オーナーシェフ



(左)原田祥希さん、(中央)オーナーシェフ中江義行さん、(右)上野湖乃美さん 
元々食べることやモノを作ることが好きだったと語るのは、オーナーシェフの中江さん。23歳で料理人を志し、ホテルニューオータニ佐賀のフレンチレストランで11年修業を積んだ。

自分の料理を表現する場は、地元である唐津だと決めていたそうで、唐津の魅力は何といっても食材の豊富さ。玄海灘で獲れる魚介類をはじめ、こだわりを持った生産者が作る美味しい野菜や米などがたくさんあると教えてくれた。同店のランチは、本日紹介した7,700円のコースと、3,300円のカジュアルなコースの2種類。ランチのコースには肉料理はなく、地元産の魚介類や野菜がふんだんに使用されている。

観光地でありながら豊富な食材が揃う唐津。地元の方には唐津の魅力を再認識してほしいし、市外県外の方には唐津の町を散策してもらい、観光スポットや食を通して唐津をもっと好きになってもらいたいとの想いをお持ちだ。
また、この季節の旬の食材である〝ジュンサイ〟を、来週スタッフと一緒に七山に採りに行くのだと嬉しそうに語ってくれた中江さん。食材が育っている場所の空気感や、そこで感じるインスピレーションをお皿の上で表現するのだという。「私たち料理人は素材があって初めて料理が作れます。外海と内海に囲まれた佐賀の土地柄に合わせた、〝素材〟を活かすイタリアンスタイルの料理を、フレンチらしさも組み込んだ形で提供しています。唐津には、季節を通しておすすめしたいモノがたくさんあるので、今後も食を通して唐津を表現していく気持ちを忘れず、皆さまの心に残るような料理を作り続けていきたいと思っています。」と話してくれた。


11年の修業を経て、2002年12月に独立し、「Y’S KITCHEN」を開店。オープン当初から、誕生日や記念日のお祝いなど特別な日に利用したいと思ってもらえるような料理とおもてなしを提供することを心がけているそうだ。コロナ禍においては、ご家族での利用が増えているとのこと。貸切(応相談/最大14名)や、お子さま連れやベビーカーでの入店も快く受け入れてくれるのも嬉しいポイントだ。

「お店は、決して私一人で作れるものではありません。空間は人が織りなすもので、一緒に働いてくれている彼女たちのサービスや声掛け、心配りが当店の空間を作り上げていると思います。」と中江シェフ。ホールスタッフの原田さんと上野さんは関西のご出身。お二人とも佐賀出身のご主人との結婚を機に唐津市民となったそうだ。「佐賀は住みやすく、ご飯も美味しいし、とてもいいところだと思います。まだまだ知らない魅力がたくさんあると思うので、これからSAGARICHさんを見て勉強していきたいですね^^」と嬉しい言葉をかけてくれた。非日常の空間でゆったりとくつろぎながら、ここでしか味わえない美味しいお料理と、心温まるおもてなしを是非体感してほしい。

名称

Y'S KITCHEN(ワイズキッチン)

住所

唐津市和多田西山3-36

TEL

☞ 0955-72-8716

営業時間

ランチ 12:00~15:00

ディナー 18:00~22:00

定休日

日曜

席数

14席(個室あり)

駐車場

5台

Instagram

☞ Y'S KITCHEN Instagramページ

Email

☞ info@yskitchen.jp

アクセス

JR和多田駅より徒歩約13分

唐津ICより車で約8分