取材日時/2020年8月20日
ナビゲーター/CHIE & NARUMI

素材は伊万里にこだわって
古民家ならではの癒しのひとときを


佐賀県伊万里市伊万里町

JR伊万里駅から徒歩5分、中心市街地の商店街にある「漬もん屋鉢瓶(はちがめ)」は、築150年以上の古民家(商家)を改装し、2017年4月にオープンしたお店。柔らかい風鈴の音色に導かれ、軒先の青い暖簾をくぐるとそこには、あまり見かけなくなった囲炉裏やかまどなど、古き良き時代の懐かしい光景が広がっていた。

宇治金時 500円

まず紹介するのは、暑い季節に誰もが食べたくなる「かき氷」。おススメは、ふわっふわの削り氷に宇治抹茶をまぶした〝宇治金時〟だ。


宇治抹茶の旨味と、抹茶ミルクの甘みがフワッと口いっぱいに広がり、火照った体を冷やしてくれる。あんこ・白玉との相性も抜群で、心の底から幸せな気持ちにさせてくれる逸品だ。どこか懐かしい、そしてホッとする味わい。

5種類のかき氷の他、冷やしぜんざい(400円)、伊万里の老舗菓子店・エトワールホリエさんの伊萬里饅頭セット(300円)、黒蜜きなこアイス(350円)などがある。ランチタイムだけではなく、カフェとしての利用もおススメだ。

漬もん屋 鉢瓶(はちがめ)
人気の秘密はどこに——。


料理が美味しいのは大前提だが、その店で働くスタッフさんの豊かなお人柄や想いが垣間見えると、人はそこに愛情が湧き、愛着を持ち、ファンになり、そして応援したいと思うようになる。料理、人、想い——。鉢瓶という店の本質を知ってもらうための努力が実を結び、今では客足が絶えない素敵なお店になっていったのだろうと感じた取材だった。


「はちがめ(鉢亀)」とは、伊万里の方言で「カブトガニ」のこと。カブトガニは別名〝生きた化石〟と呼ばれており、2億年もの間、どんなに環境が変わっても姿形を変えることなく、力強く、泥臭く生きてきた。
 

自分たちの店も、どんなに時代が移り変わろうとも、環境が変わろうとも、泥臭くてもいいからカブトガニのように力強く、そして長く生きていく店にしようという想いから「はちがめ」と名付けられた。本来は「はちがめ=鉢亀」だが、漬物を付ける瓶(かめ)の文字を当てて「はちがめ=鉢瓶」となったそうだ。

同店では自家製のお漬物を中心に、羽釜のかまどで炊き上げたご飯と、伊万里産の素材を使ったお料理を提供している。かまどがあるのは厨房ではなく、お客様の目に触れるレジ横。ご年配の方に懐かしんでもらったり、お子さまや若い方に薪をくべる様子を見てもらえるよう、あえて低い場所に設置してある。

また、伊万里焼きの器、伊万里牛、波多津の車海老、地元で採れた野菜などなど、伊万里産の素材を出来るだけ使い、お客様に伊万里の魅力を五感で楽しんでもらえる工夫が施されているのも嬉しいポイントだ。

客席も古民家の風情が漂う落ち着いた雰囲気。

お座敷とテーブル席、カウンターが完備されており、色んなシーンで利用していただける。

自家製のお漬物の販売も。玄関横には伊万里焼きの器や伊万里市の酒蔵が造る日本酒などが展示されている。

おすすめランチの紹介


テーブルに常備されている漬物は自由に食べてOK! 伊万里産・佐賀県産の旬な野菜を使用した漬物が日替わりで用意されており、おかわりも可能。本日の漬物は、刻みたくあん(左)、はりはり漬け(右上/切り干し大根を醤油に漬け込んだもの)、きゅうりの浅漬け(右下)。
「はりはり漬け」は特に人気だそうで、モデルの2人も箸が止まらなくなるほど。かまど炊きの美味しいご飯のお供にピッタリの濃いめの味付けが食欲をそそる。

ハンバーグランチ 800円


メインは、片岡精肉店(伊万里市伊万里町)の粗挽きミンチを使用した絶品ハンバーグ。蒸気でふっくら焼き上げられており、肉の旨味がたっぷり感じられるジューシーな一品だ。

ソースは和風、トマト、テリヤキの3種類から選べる。

伊万里ランチ 1,200円


伊万里牛、波多津産車海老、くじら(皮鯨)の盛り合わせ。オール伊万里の食材を使用した店自慢の限定食。

贅沢な主菜・副菜を引き立てるかまど炊きのご飯。この美味しさはぜひ一度味わってみてほしい! 

ミディアムレアに焼き上げられた柔らかい食感の伊万里牛に合わせるのは「波浦の塩」。

こちらは波多津で水揚げされた立派な車海老だ。

野菜と揚げ豆腐の焚き合わせは、素材の味を最大限活かす優しい味付け。

「伊万里ってこがん美味しかとのたくさんあるんやね!」と感嘆の声を上げるCHIEとNARUMI🎵

食後のデザートは伊万里産の梨「豊水」。酸味と甘味のバランスいいさっぱりとした味わいだ。

おにぎりランチ 500円


羽釜のかまどで炊き上げられたご飯を〝おにぎり〟でいただけるリーズナブルなランチ。+100円でご飯のおかわりが可能。

お漬物、だし巻き玉子、焼き魚、お味噌汁など、昔ながらの懐かしい味が楽しめる。 

だし巻き玉子の卵は原養鶏場(伊万里市立花町)のものを使用。卵の美味しさと出汁の旨みが優しく体に染みわたる。

お子さまや女性の方でも軽く食べられるボリュームだ。

椎谷 良史さん
漬もん屋鉢瓶 店主/障害福祉サービス事業所「にこにこいまり」副施設長/精神保健福祉士



同店は、伊万里市のNPO法人「にこにこくらぶ」が運営。障害福祉サービス事業所「にこにこいまり」(B型事業所)で障がいがある方(=以下「利用者」)の社会参加を支援・サポートしている団体だ。こちらの事業所では利用者さんが松浦一酒造(伊万里市)の酒粕を使った奈良漬けを作り、販売している。

「漬もん屋 鉢瓶」の店主・椎谷さんは、13年程前からこの障害福祉サービス事業所「にこにこいまり」に勤務している。しかし、福祉の道を進むのか、以前から勉強したいと思っていた教育の道に進むのか、立ち止まった時期があったのだという。それから3年ほど、教育の勉強をするために佐賀県の不登校の児童が通う学校に勤務した。そして30歳の時、福祉の道に戻ることを決意し、「にこにこいまり」で再び働き始め、現在は飲食事業「漬もん屋 鉢瓶」の店主として、事業所の副施設長として仕事に励んでいる。


「これまで福祉という畑にいる私たちは、県や市、町行く方々から助けてもらうことが多く、正直なところ、それに慣れてしまっていました。しかし、『鉢瓶』の立ち上げをきっかけに、逆に私たちが伊万里という町に対してできることは何なのかという考え方に切り替わったんです。私たちの力は本当に微々たるものではありますが、伊万里を盛り上げていきたいと強く思っています。」と椎谷さん。

しかし、2017年4月にオープンした当時はスタッフも椎谷さん自身も飲食の経験もなかったため、お客様を怒らせてしまったこともあったと懐かしそうに話してくれた。お客様に「この店でどがんとば食べたかですか?」と意見を聞いたり、来てくれたお客様からの励まし、応援がとても力になったという。「何においてもお客様に育ててもらいながら、ようやくここまで来れました。有難い限りです。おかげさまで伊万里市内はもとより、市外、県外からのお客様も多く足を運んでくれるようになりました。」と椎谷さん。今では連日満席が続く大人気店になったのだ。


「ご来店いただくお客様の大切な時間とお金をいただいているので、美味しいものをお腹いっぱい食べて満足して、そして笑って帰っていただけるようなサービスを提供していきます。そして、伊万里にはとても素敵なものがたくさんあります。プライドを持って取り組む生産者の方もたくさんいらっしゃいます。私たちはそんな伊万里の魅力をさらに引き出していけるよう精進して参ります。

当店で伊万里の魅力に触れ、実際に大川内山や商店に足を運んでもらい、〝五感〟で伊万里を味わってもらえたら嬉しいです。伊万里を楽しみたい方はまず鉢瓶にお越しください(^^)」とメッセージをくれた。

名称

漬もん屋 鉢瓶(はちがめ)

住所

伊万里市伊万里町大字仲町261-2

TEL

0955-25-9806

営業時間

11:00~16:00

※ランチのオーダーストップは14:30です。

定休日

火曜

席数

27席

駐車場

10台

Instagram

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アクセス

JR伊万里駅より徒歩約5分