187センチの長身から繰り出される華麗なパフォーマンスの数々。得点率の高さが際立つ、若きプロバスケットボール選手だ。その彼の人となりと、幼い頃から一心に打ち込んだバスケットボールに対する想いを深堀りする。
德川 慎之介 選手
<PROFILE>
佐賀県唐津市生まれ唐津市育ちの27歳。長松小学校、唐津東中学校、唐津東高校から東海大学へ進学。大学卒業後はバスケットボールのプロ選手として長野県、福島県のチームでプレー。2020年8月に佐賀BALLOONERSへ移籍し、現在シューティングガードとして活躍中。
Encounter with basketball
バスケットボールを始めたのは小学校2年生。経験者の父の影響でバスケットボールが身近な存在だったと德川選手は言う。しかし、バスケットボールチームに入部したのは、お父様から〝必殺技〟を教えてもらうためという、何とも子どもらしい理由からだった。
家にあったリングでよくお父様とバスケットをしていたそうで、「お前はいつバスケットチームに入るとや? もしチームに入ったら誰にもボールを取られない必殺技ば教えてやる。」とお父様。その必殺技を知りたい気持ちに駆られ、強豪・長松キャッスルズというミニバスケットチームに加入して、意気揚々と家に帰った德川選手だった。どんな必殺技を教えてもらえるのか———。期待と喜びで胸が高鳴った。すると、お父様は我が子に背を向け、単にボールが届かないくらい遠くまで手を伸ばし、ドリブルするだけ。「バスケットボールチームにはいつか入ろうと思っていたので全然良かったんですけど、しょうもない必殺技にガックリしたのをよく覚えています。」と目を細めながら懐かしそうに話してくれた。
そもそも唐津市はバスケットが非常に盛んな地域。毎年の国体予選の開催地になったり、スーパーリーグ(当時の実業団チームのリーグ)を招聘し、試合を開催するほどバスケット熱が高いのだ。小学生時代、佐賀県代表として全国大会に出場するほど、幼い頃から才能を発揮していた德川選手。東京・代々木体育館で開催された全国大会に出場したのだが、なんと前日にディズニーランドへ行って完全燃焼してしまったそうで、全国大会では結果が残せなかったそうだ(笑)しかし、幼いながらに経験した全国大会。当時は、どれほど凄いことなのか、自分たちの実力がどの程度のレベルなのかも分からなかったそうだが、その経験がその後のバスケットボール人生に活かされているのは間違いないだろう。
全国を経験したことで一度バスケットから離れることを決意し、中学校ではサッカー部に入部した。しかし、2年ほど経った頃、「サッカーは昼休みとか放課後にやる方が楽しいな」と感じ、バスケットの世界へ舞い戻った。
德川選手は、唐津東が中高一貫校になった時の一期生。唐津東といえば県内でも有名な進学校で、勉強も大変な中、佐賀県大会で4本の指に入るほどのバスケットボールの強豪校だったそうだ。
The crossroads of life.
德川選手は、体育の教員免許が取得できてスポーツのことをしっかり勉強できる東海大学へ進学することを決めた。同大学はバスケットボール日本代表が多く在籍する強豪校。そんな仲間たちと切磋琢磨を重ねながら濃い4年間を過ごした。そして迎えたもう一つの分岐点、———就職だ。
大学卒業後はバスケットを辞めて一般企業への就職を考えていた德川選手に、監督から「プロで頑張ってみないか」というアプローチが幾度となく繰り返された。しかし、同級生には日本代表に選出される選手がたくさんいて、「自分はそんなに実力もないしプロに行っても活躍できる訳がない」と断り、一般企業への就職活動を進めた。でもある時、自分の中にモヤモヤとした感情があることに気付いた。
———自分が本当にやりたいことは何だ? 今しかできないことは何だ? 人生掛けたいと思うものはただ一つ。そう、バスケットボールだ。
德川選手は決断した。「通用するかも分からない。先が保証されている訳でもない。でも、自分がどこまでやれるのか、チャレンジしてみたい。」監督にお願いして色んなチームにコンタクトを取ってもらい、契約を交わしたのは長野県のプロバスケットチーム「信州ブレイブウォリアーズ」。ここから德川選手のプロバスケット選手の道が始まる。
Prepared as a professional player.
全然勝てない日々が続いた1年間。本当に苦しいシーズンだったと振り返る。その翌年からの3年間は福島県のプロバスケットチーム「福島ファイヤーボンズ」でプレーした。福島ファイヤーボンズは東日本大震災を機に設立されたチームで〝復興の象徴〟と呼ばれ、選手たちは県民の期待を背負ってコートに立ったという。結果、球団の記録を塗り替えるシーズンとなったのだった。「このチームは、震災とは切っても切り離せないチームで、復興支援事業に携わったり、バスケットボールをやっている子どもたちの育成に携わる機会が多かったです。約10年が経った今もなお手付かずの状態にある被災地を訪れたり、被災者の方々に寄り添う経験が出来たことも福島に行って良かったと感じることです。」と、当時を振り返っての想いを教えてくれた。
「自分が好きなバスケットボールを仕事としてやることで、バスケットボールに対する〝見え方〟が変わったのは事実です。もちろん好きなことをやってるからこそ言い訳は絶対にできませんしね。ただ、仕事にしてみないと生まれることのなかった〝覚悟〟を手にすることができました。僕たちはプロだから、応援してくれているファンの方々やスポンサーさんがいる。その人たちが喜んでくれて、心から楽しんでくれるのが一番なんです。そのためには、やはり自分が楽しんでいないと心を打つようなプレーはできないし、伝わるものがないと思っています。」と德川選手。プロバスケットボール選手は、最大3年の契約が結べるが、通常は1年の契約になるそうだ。別チームからオファーされたり、チームの方針と合わないなどの理由で短期間で移籍する人が多いとのこと。1年間の結果によって状況がガラッと変化する非常にシビアな世界なのだ。
元々日本のバスケットボール界には、「BJリーグ」と「NBL(ナショナルバスケットリーグ)」の2つのリーグが存在していた。2016年、東京オリンピック開催の決定を機に2つのリーグが一本化。ジャパンプロフェッショナルバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(ビーリーグ)」が発足したのだ。「B.LEAGUE」は1部リーグ(B1)と2部リーグ(B2)に分かれ、それぞれ東日本8チームと西日本8チームに分かれている。シーズンは10月から翌年4月。5月には東日本と西日本の交流戦であるプレーオフが開催される。
2020年8月、地元佐賀のプロバスケットボールチーム「佐賀BALLOONERS」に移籍。なんと佐賀県出身の選手は德川選手が初めてなのだという。「このチームに移籍したのは、生まれ育った地元に帰って来たかったからです。大学からこれまで、関東や東北でプレーしていたので唐津に住んでいる両親にバスケをしている姿を見せたい思って、佐賀BALLOONERSが発足した2018年からこのチームに注目していました。」と德川選手。現在、佐賀BALLOONERSはB2西日本リーグの1位。このまま1位をキープできればプレーオフに進出でき、B1リーグ昇格に1歩近づくことが出来る。
2018年に発足した佐賀BALLOONERSに在籍する選手は現在14名。まだまだ知名度が高いチームではないのでPR活動にも力を入れていきたいとのこと。また、行政としての手厚い支援も非常に有難いと思っているそうだ。
A team sport called basketball.
「人が集まるとそこに1つの社会が出来て、そこには色んな個性や考え方があります。バスケットボールのチームもそれと同様です。ただ、この〝チーム〟という社会に居る人たち全員の根底には〝バスケが好き〟という共通の思いがあるんです。どんな人がいても、どんな個性や考え方があっても、その思いだけで結果が生まれていく面白いスポーツだと思います。調子が悪い時はお互いに引っ張り上げて、輪から外れた時は手を差し伸べ合うことができます。僕はバスケットボールやサッカーなどのチームスポーツしかやったことがないけど、個人スポーツってどんな結果になってもその責任が全部自分に降りかかってくるものですよね。その重圧の中で最高のパフォーマンスを発揮しなければいけなくて、強さを追い求めていく精神力は尊敬に値すると思っていつも見ています。チームスポーツ・個人スポーツに関係なく、スポーツっていいなと心から思います。」
「それと、バスケットボールに限らず、何か一つのことをずっとやり続けている人に共通すると思うんですが、 〝人生をかけてもいい〟と思えるものがあるのって本当に幸せなことだと思うんです。それは大学の進路選択の時も、プロになった今も思うことです。プロなんて明日食っていけるかも分からない世界で、そんな中で本気で打ち込んでいける人って少ないと思いますし。そこにはやっぱり 覚悟と情熱が必要なんだと思います。大きい小さいに関わらず、自分がそれを一つ持てたのはバスケットボールをやってきてよかったと思うことです。」
佐賀BALLOONERSを生観戦
バスケットボールの試合は照明やスクリーン、音響などを駆使したエンターテインメントの要素が強く、一種のショーを見ているかのよう。なんと今シーズンは佐賀市の協力によって自由席が 半額! 1階自由席が1,000円、2階自由席が800円と非常にリーズナブルなのだ。コートサイド(選手に一番近い席)は4,500~5,500円とのことだが、ぜひこの機会に足を運んでほしい。
観戦チケットは
☞ 佐賀BALLOONERS公式ホームページ からどうぞ!
SAGARICHの読者の皆さんへ
德川 慎之介選手よりメッセージ
「バスケットボールって〝敷居が高いんじゃないか〟と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと映画を見に行くくらいの気軽さで会場に足を運んでもらえれば、絶対に楽しんでもらえるコンテンツがあると思います! 現在、新型コロナウイルスの影響で声を出しての応援はできませんが、天候に左右されることなく、アルコールを片手に観戦できるのもバスケットボールの魅力です。皆さんのお越しをお待ちしています。」
佐賀BALLOONERS広報担当
野中 三峰子さんよりメッセージ
私は元々野球が好きで、この会社に就職しなかったらバスケットボールとは無縁だったと思います。でも、初めてバスケットボールの試合を観戦した時に、野球とは比べ物にならないくらい選手と距離が近くてものすごく楽しかったんです。現在、佐賀BALLOONERSの広報としてお仕事させていただいていますが、このチームに所属する選手はとてもフレンドリーで面白い方ばかり。私はこのチームが大好きです。1回試合を観たら絶対ハマると思うので、チケットが安い今のうちにぜひ足を運んでほしいと思います!」とメッセージをくれた。
<佐賀BALLOONERS公式アカウント>
公式ホームページ
☞ https://ballooners.jp/
Facebookページ
☞ https://www.facebook.com/sagaballooners/
KENTO編集長の所感
今回の次世代のリーダーはバスケットマン🏀
バスケットといえば、スラムダンクという世代ではあるのですが、日本でもプロバスケBリーグが創設されてから、さらに身近になった気がします。私も意外と知らなかったのですが、唐津の方はバスケットが結構盛んで、ミニバスケチームから高校バスケまで強豪チームが多数あるみたいです。そんな唐津出身の德川選手ですが、バルーナーズ選手の中で唯一の佐賀出身。インタビューの中で、佐賀が大好きという気持ちを存分に語っていただいた一方、選手としてだけでなく、チームをどうすればPRできるかなど、真摯に考えている姿から德川選手の人柄を感じました。
ぜひ私も、一人のファンとして、プレイの応援にいきたいと思います❗️ SAGARICHとしても、全力で応援していきたいと思います❗️