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守るべき伝統と未来のための挑戦



明治8年に創業された天山酒造は小城市小城町岩蔵にある。明治、大正、昭和、平成、そして令和。5つの時代を歩んできた天山酒造。伝統を重んじながらも、挑戦をし続ける老舗の6代目蔵元・七田謙介(しちだけんすけ)社長にインタビューさせていただいた。
社長室に掲げられている〝不易流行〟という言葉。話を伺っていくと、まさにその言葉通りの〝挑戦〟をされていることが分かった。

まずは、変えてはいけないもの。
天山酒造の六代目として、次の世代へ継承していく。そのためには時代に合わせて変えていくことは必須。しかし、真理というか、日本酒に向き合う心、考え方、志は時代を越えて受け継がれていくものだろう。今回のインタビューを通して、七田社長の言葉の随所に、伝統を重んじる心と先代への感謝を感じた。
さて、普段酒蔵に行く機会がない我々のために、社長自ら蔵を案内してくださった。まず驚いたのが縦にも横にも、広大な敷地面積だ。明治蔵、大正蔵、昭和蔵とうまく増床した蔵が立ち並んでいる。古くなったからといって、壊して新しいものを建て直すのではなく、設備を含めて、風情がある景観を残している。自然豊かな小城の木々や川に囲まれた酒蔵は癒しのスポットであることは間違いない。これからもこの景観は次世代へと受け継いでほしいと心から思った。

そして、変えていくもの。
まさに七田社長の手腕が輝く領域。それは市場の拡大、〝佐賀から世界へ〟の挑戦だ。 七田社長は、四国の酒蔵で修業したのち、平成9年にご実家である天山酒造へ戻ってきた。その1年前の平成8年にアメリカへの日本酒輸出がスタート。しかし、当時はまだまだ日本酒を海外に輸出するのは珍しく、海外に日本酒の市場なんてないに等しいものだった。

そんな時、「1つの蔵ではできないことでも同じ志を持つ蔵元が集まってチャレンジすれば、市場を開拓できるんじゃないか」と、海外市場にチャレンジしたい蔵元が全国から10数社集まり、日本酒輸出協会が立ち上がった。 まずは海外での啓蒙普及活動から取り掛かった。対峙するのは日本酒を何も知らない外国人。日本酒とは何ぞや、というところから伝えなければならなかったのだ。
天山酒造六代目 七田謙介社長

何よりも行動。実際に見ないと、やらないとわからない。
「この時はまだ〝海外にチャレンジすべきだ〟という漠然としたビジョンでしかなかったですね。それでも行動を起こそうと思った要因は2つ。1つは国内での日本酒市場が伸び悩み、もう1つは純粋に海外の人たちが日本酒に対してどういう反応をするのかという好奇心でした。」
欧米人たちのリアクション
七田社長たち、日本酒輸出協会がジャパンソサエティーとタッグを組み、アメリカ・ニューヨークで日本酒のテイスティングイベントを開催することができた。日本酒を口にしたアメリカ人は、「ワインの原料はブドウだからフルーティーになるのは分かるけど、なぜ穀物である米が原料なのにこんなに華やかな香りがするんだ!?」という驚きのリアクションを取ったそうだ。七田社長は、日本人と違う表現や感覚を持つ海外の人たちの、そのリアクションが非常に新鮮だったと当時を振り返った。
しかし、日本酒輸出の先駆者に対して肯定的な意見ばかりではなかったようで、「ニューヨークまで高い旅費を払ってまで行く必要があるのか?日本で売っていればいいじゃないか。」と同業者に馬鹿にされたこともあったという。それに対して七田社長は、「ニューヨークに行かなければ分からなかったことがあったと思います。例えば、ニューヨークのイーストヴィレッジ。そこに赤提灯がぶら下がっている1軒の日本酒バーがあります。そこを初めて訪れた時に、大柄な黒人が天山酒造の日本酒を、笑顔で、そして美味しそうに飲んでいる光景が目に飛び込んできて… 私は鳥肌が立ちましたよ。その時に〝近い将来、アメリカの人たちが日本酒をもっとも身近に感じる時代が来る〟と直感しましたね。」と語ってくれた。


当時アメリカで流通していた日本酒は大手酒造メーカーによる現地生産の商品で割とリーズナブルな価格で流通していた。日本で生産したものを持っていくとなると大幅なコストがかかり、販売価格は日本価格の2倍ほどになってしまう。海外では日本酒は〝高級品〟、気軽に飲めるものではないのだ。
日本酒の輸出が始まってからおよそ20年の月日が経ち、海外での日本酒市場も開けてきたが、高級品である日本酒は、お寿司屋さんや日本食があるレストランなどでの展開がほとんど。まずは「和食×日本酒」という出来上がった掛け合わせを打破することを目標に掲げてきた。

これからの挑戦! 〝現地の食事×日本酒〟の市場の拡大
本当の意味で、日本酒市場が広がりつつあるのはアジア圏とアメリカ。なぜならそこに和食レストランが多いからにほかならない。それに比べてヨーロッパは、まだまだ和食の文化はその領域に及ばず、ワインが主流である市場で、日本酒を知ってもらう機会の創出には時間がかかると七田社長。その足掛けとして、3年前からフランスで開催されている「KURA MASTER(クラマスター)」というコンペティションに参加している。審査基準はフレンチとのマリアージュで、審査員はトップソムリエたち。その「第1回KURA MASTER」で優勝したのが天山酒造の日本酒なのだ。「このコンペの意義は、フランスのトップソムリエたちにうちの日本酒を知ってもらう機会になること。それから、和食とワインがマリアージュされるようになったように、日本酒と現地の料理と掛け合わせることで、レストランだけではなく各家庭の食卓でも消費されるように、カルチャーを作っていけたらとも思っています。実際にキャビアにはワインより日本酒が合うと思います。また、海外で行われる日本酒のコンペティションに参加することで、海外の市場を開拓したいのはもちろんあります。しかし、それだけでなく、海外における日本酒の評価を、国内における日本酒の需要喚起に繋げたいという思いもあるんです。」と、思いを語ってくれた。
SAGARICHの読者の皆様へ!
天山酒造では、幅広い世代の方に日本酒を味わってもらおうと蔵開きなどのイベントを定期的に開催しています! イベントでは日本酒だけでなく、日本酒というプロダクトを通して日本の文化も楽しんでもらうことをコンセプトに掲げ、蔵内に設置したバーカウンターでバーテンダーが日本酒カクテルを振る舞うなど様々な企画を展開しています★ ぜひぜひ天山酒造にお越しください♬

商品の紹介



岩の蔵 純米吟醸 720ml
  • 【価格】1,400円
  • 【精米歩合】55%
  • 【日本酒度】+3.0
  • 【酸度】1.1
  • 【アルコール度数】16度

七田 純米大吟醸 無濾過生 720ml
  • 【価格】2,700円
  • 【精米歩合】45%
  • 【日本酒度】+1.0
  • 【酸度】1.5
  • 【アルコール度数】16.8度

天山 純米吟醸720ml
  • 【価格】1,500円 抜き
  • 【精米歩合】55%
  • 【日本酒度】+1.0
  • 【酸度】1.4
  • 【アルコール度数】16度

七田 純米 無濾過 720ml
  • 【価格】1,250円
  • 【精米歩合】65%
  • 【日本酒度】+2.0
  • 【酸度】1.7
  • 【アルコール度数】17度

天山 スパークリング 750ml
  • 【価格】5,400円
  • 【アルコール度数】13度
  • 澱抜き後の糖分添加を行わない「ドザージュ・ゼロ」により、米本来のピュアな味わいを活かしたドライで繊細なお酒に仕上がっています。

酒蔵と工場を見学させてもらいました!



何とも趣深い蔵の中を見学させていただいた。

下の階にある酒樽を混ぜるために床に空いた穴。酒樽を上からのぞき込む、そんな光景を目の当たりにしたのは初めてだ。

天井にあるのは元々お米屋だった時の名残。

これは大きな酒樽だ。

酒樽の直径は二人の身長よりも長い。

酒蔵に併設された工場では瓶詰め作業が行われていた。

この1本1本がお客様の手元に届くと思うとなんだか感慨深い。

これからも美味しいお酒を造り続けて、日本はもとより世界の人たちに届けてほしいと思う。
名称

天山酒造株式会社

住所

小城市小城町岩蔵1520

TEL

0952-73-3141

営業時間 

9:00~17:00

定休日

土日祝日

駐車場

10台

HP

天山酒造 公式ホームページ

アクセス

多久ICより車で約15分

JR小城駅より車で約8分

小城バスセンターより車で約6分