2018.8月号
ナビゲーター/HONAMI & MOMOKO

有限会社 畑萬陶苑 
4代目社長 畑石真嗣さん
伊万里・有田焼伝統工芸士


畑萬ブランドを世界に

畑石社長は、創業92年の畑萬陶苑の4代目だ。御年63歳。その考え方に、これまで出会ったことのない焼き物師としての斬新さを感じ、とても魅力的だった。
最近は、人工知能=AI、などがマーケティング分析の主流とつぶやかれ、会社の運営の方向性すら決めていくような時代。

つまり、人生をコンピューターに託すようなものだが、それが最先端技術であるから正しいかのような理論が当たり前になってきている。しかし、そうではないことを改めて実感したのは、畑石社長の持論を聞いた瞬間だ。まるで、揺るがない強い信念を持つクリエイターとはこの方のような人のことを指すのだろう。

また、畑石社長の視点は広い。決して、一点だけを見つめていない。総合的に到達したい目標に対し、クリアしなくてはならないいくつかのカテゴリーの進捗を冷静に把握し、最終的に合算しカタチを得るのだ。それこそが、新しい物を作っていく時に大事な視点であり、かつ、成功するための秘訣であろう。きっと、世に成功を収めた人々は、作るものや成しえた事こそ違え、この段階的手法は同じなのかもしれない。何のことを言っているのか、とお思いの読者もいるかもしれないので具体的に例を挙げて説明する。

まず最初に申し上げたいのは、畑萬が作る焼き物はデザインが斬新だ。 そのデザインは、当然ながら、一朝一夕に作られたものではない。なぜなら、それを作るためには勇気と技術が必要だからだ。

勇気とは、そんなデザインのものを作っても売れるかどうかもわからないがチャレンジするということ。しかも、最終的にそのデザインに決断するためには時間がかかる。

技術とは、そのデザインを実現しうる技法を持ち得ているかどうか、ということ。だが、その技法はこれまでにないものだから、簡単には作れない。失敗を繰り返した挙句、ついに習得できるものなのだ。

畑石社長は、時代に合わせて使ってもらえる器を作らなくてはならないが、使う人の用途に合うもので、それでいて使う人が気に入るデザインでなくてはならない。だから、従来のデザインをなぞるのではなく、気に入ってもらえる斬新なデザインでなくてはならないと語った。その結果、社長が考案したいくつかの斬新なデザインの器は、和とか洋とかのボーダーを超えた。それを手にした人が使いたいかどうかだけを、器を通じて問いかける。

その時、大事なことは、いかなる過程を経てこの器ができあがったか、というストーリーを聞かせることなのだそうだ。まさに、メイクドラマである。

時代とコラボする1mmの世界


「芸術には創作性があり、オリジナルが認められればいずれ伝統になるだろう。そこから新たな物語が始まり、その応用編が新たな食器提案になるので新たなファン造りにつながる。だから、期待を持たせるために毎年、挑戦し提案していきたい。手法、技法的、焼き方、素材的にも、まだまだ相当数存在するのだから。」と畑石社長。

そんな考え方から、新しいものを作るときは自分で作って失敗を重ねるそうだ。「でも、自分は伝統工芸士だから当たり前だ。」と笑う。焼き物の将来を考える時、装飾品と実用品、どちらにも未来はある。なぜなら、両方生活空間であるからだ。ヒントは、LEDなど時代に生まれた文明を活かしていくこと。この時代で新しく面白いものがあればそれとコラボすることで新しいものが生まれる。インテリアとしてなど、生活空間に我々の伝統工芸がいかに入り込めるかがカギなのだ。

昔のデザインを崩して作っているところが多いのが現状。しかし例えば、今の生活様式の中にガーデニングでは、ラベンダーやポピーなど洋花は多い。昔はボタンや椿。今の若い人には合わないし、生活様式にも合わない。だから、それに合う器が必要だということ。この考え方をを大事に育てることで将来、ブランドとしての価値になる。ブランドとは産地ではなく個々の考え方やものであって、決して、伊万里焼がブランドではない。伊万里焼は単なる産地で、そのブランドどこにあるのかと問われ初めて「伊万里」が出てくる。つまりは、考え方からものを作っていかないと物は生まれないし、付加価値はつかないと畑石社長は語ってくれた。


ギャラリーの様子


1階ギャラリー


実用性の高い器がズラリと並ぶ。

日常に使いたい作品に目移りする二人。

HONAMIのお気に入りはこれ!

素敵な絵柄の器たち。

昔ながらの絵柄もいいね。

ウキウキ気分のMOMOKO♪

美しい白磁に青い花が描かれたワイングラス。

まるで西洋磁器のようなカップ&ソーサーも、畑萬オリジナルの技法のもの。

2階提案型ギャラリー


焼き物には珍しい作品ばかり。

このネックレス、中に香水を入れると香りが漂うネックレスになる。 

畑萬では、10種類の香水も一緒に提案している。
名称

有限会社 畑萬陶苑

住所

伊万里市大川内町乙1820

TEL

0955-23-2784

営業時間

8:30~18:00

定休日

1月1日のみ

駐車場

大川内山無料駐車場をご利用ください。

Instagram

☞ 畑萬陶苑 Instagramページ

アクセス

武雄北方ICより車で約30分

JR伊万里駅より車で約15分