2017.7月号
ナビゲーター/MAYUKO

オーナーソムリエ
足立 裕子さん


ワインソムリエの資格は、現場経験が5年ないと試験が受けられないというが、足立さんは、お店をオープンして3年目で資格を取得した。ソムリエの上にシニアソムリエ、マスターソムリエという資格があって、シニアソムリエは現場経験が10年以上で試験が受けられる。足立さんは、次は3年後のシニアソムリエの資格取得を目指す。「自分は覚えるのに時間がかかるから、その分努力しないといけないが、自分が好きなことだから楽しい。」と爽やかな笑顔で語ってくれた。

足立さんはかつて、大阪の梅田の飲食店で働いていた。そこの社長がソムリエだった影響もあり自分の店を出したいと思った時、真っ先にワインの店を出したいと思ったのだそうだ。そんな目標を見つけて以来、意識して勉強のためにワインを飲み研究を重ねた。当時は甘い酒が好きでワインは好きでなかったが、勉強するうちに深く興味を持ち始めた。
それは大阪の店のソムリエ社長に「毎日ワインを飲みなさい」と言われたことがきっかけだった。だからワインばかり飲んでいた。資格を取るために店で働きながら勉強を始めて、まさにワイン漬けの日々を送った。さらに、人の舌は案外いい加減らしいので鼻を鍛える為に毎日、グラスのワインをかいで香りの勉強をした。1杯のグラスをずっと嗅ぎ続けると言った具合だ。温度などもあるのでグラスについで横においておき、香りの変化も研究した。土、石ころ、スーパーに行ったら野菜、肉、魚など、なんでも嗅いで嗅覚を鍛えた。そうするといつしか、いくら嗅いでもわからなかったワインの香りが、ある日ふっと分かるようになった。全ては資格試験に合格するための執念ともいえる努力の賜物。実はソムリエの試験はそれほどくらい難しいのだ。

例えば、「カルバドス」というリンゴから作ったブランデーについて、ブラインドテストで出てくる。リンゴのニオイを嗅ぎ分けてて、似たような色の様々なブランデーの中からこれを当てないといけないくて、はじめはブランデーの中にあるリンゴの香りがまったくわからなかったそうだ。足立さんは、くやしくて毎日グラスについで嗅いでいたら、試験の3日前くらいに突然リンゴの香りが分かるようになった。それからははっきりと嗅ぎ分けられるようになった。当然、試験当日にもカルバドスが出て、当てることができた。それからは香りが大切だと思い、今でも毎日香りをかいでいる。足立さんはそんな大変な努力家なのだ。そして7年目を迎えたこのお店は「佐賀の至宝」と言っても過言ではないワインビストロであると思う。


ワインの味わいは香り


厳選しているので種類はそんなに多くないそうだが、2週間ごとに違うものを仕入れている。もちろん、足立さんが試飲してから仕入れているお墨付きのものばかりだ。ワインはヨーロッパを中心に世界中からお取り寄せ。フランス産も多いが、産地のこだわりはなく美味しいワインがあればどこの国の物でも取り寄せるというから楽しめそうだ。夏、7月に特に人気なのは白ワインやシャンパーニュ、スパークリングワイン。シャンパーニュをグラスで飲めるのは、ワインの回転の早いワインバーならでは。なぜなら、シャンパーニュは泡が弱くなると提供できない(日持ちしない)ので、グラスで出す店は大変、珍しい。ワインのお店だからこその醍醐味がここにはある。

ワインは劣化しやすいし、振動や温度変化に弱いのが特徴。しかし、ここではお店自体がワインセラーとして24時間温度管理を徹底しているというからスゴイ。温度変化はワインにとって良くないから、ワインは店内に置いたまま。7年間お店のエアコンを切ったことがない。バックヤードもそうだ。さらに、ワインは振動に弱く、入荷直後は風味が変化しているらしい。この現象を、プロ的には「輸送に疲れる」というらしい。だから、入荷後はすぐに店には出さず3日くらい寝かせるのが当たり前という、ストイックな管理を徹底しているから、ここではいつでもおいしいワインを本格的に楽しめるというわけだ。


おすすめメニュー



ラクレットは某アルプスを舞台にした漫画でお馴染みの山のチーズのこと。ラクレット料理は、このチーズを使ったスイスの伝統料理で、専用オーブンで溶かしたチーズを温かいジャガイモやバケットなどにかけて食べる。

店ではアツアツのチーズを目の前でかけてくれるから、これがまた食欲をそそる。チーズを固まりにくくするため、皿は2枚重ねで、上の皿を熱くしていてチーズを固まりにくくしてあるから、具材と絡んで大変美味しい。

足立さんは、チーズのプロフェッショナルという資格も取得している。ソムリエの試験と同じようにブラインドテストがあって、チーズについてしっかりと理解していないと合格できない。2時試験で企画・販売・接客・人間性なども見られるのでワインの試験よりも難しい。ワインもチーズも勉強をしたからこそ、ワインに合わせたチーズ、チーズに合わせたワインを提供できるというわけだ。

店内の様子



ワインに囲まれたテーブル席。

厳選された旨いチーズがズラリ。

ソムリエと話しながら飲むワインは格別。
名称

Natural Maison H

(ナチュラル メゾン アッシュ)

住所

佐賀市駅南本町6-2

TEL

0952-37-9915

営業時間

20:00~25:00(L.O.)

定休日

不定休

駐車場

なし

※近隣のコインパーキングをご利用ください。

席数

15席

アクセス

JR佐賀駅(南口)より徒歩約5分