人々を魅了する“妖艶な棚田”



棚田のある浜野浦区は佐賀県東松浦半島北西部にあり、通称「上場台地(うわばだいち)」と呼ばれている。11.5ヘクタールの範囲のなかに1枚4アールほどの水田283枚が連なっており、地元集落の人々が耕作している。この棚田、実は唐津の名護屋城とも繋がりがある。豊臣秀吉が朝鮮出兵で拠点とした名護屋城。築城の際には、各地から石工や大工などの専門職人が数多く呼び寄せられた。そして築城後、浜野浦の近くに住み着いた石工たちの子孫により代々築き上げられたものが、この棚田なのだそうだ。そのため、名護屋城の石垣と同じく自然石を使った「野良積み」という方法で積み上げられている。
「浜野浦の棚田」では早場米コシヒカリを生産しており、4月末から5月上旬にかけて田植えが行われる。1年のなかでもこの時期は代掻き田植えと西の海に日が沈む時期とが重なり、多くのファンが訪れる。特に、沈む夕日が棚田の水面を照らす様は何とも妖艶である。またこの時期以外でも、春は一面に咲き乱れる菜の花、夏は澄み切った青い空と海、そしてピンと伸びた鮮やかな緑の稲の競演、秋はふっくらと実りを迎えた稲穂で黄金色に染まった様、冬は積雪により真白に埋め尽くされた世界と、季節により様々な表情を見せてくれる。この景色が話題を呼び、「浜野浦の棚田」は平成11年に「日本の棚田百選」に認定、平成19年には「恋人の聖地」にも認定されている。さらに、平成23年には「佐賀県遺産」にも認定されるなど、その景観美は全国からもお墨付きだ。

咲き乱れる菜の花

鮮やかな緑の稲

黄金色に染める稲穂

真白に埋め尽くす雪

恋人の聖地


「浜野浦の棚田」は、平成19年、NPO法人「地域活性化支援センター」がプロポーズにふさわしいロマンティックなスポットとして「恋人の聖地」に認定している。「恋人の聖地」は今でこそ各地に広がっているが、当時はまだ無名で、九州でも2~3番目の認定だった。現在は全国で140ヶ所(サテライトも含めると約230ヶ所)が認定されているが、「浜野浦の棚田」はその中でもベスト9に選ばれたことがある人気スポットなのだ。展望台へ行くと、“この地に立つ2人が永遠の愛で結ばれるように”と置かれた「エターナルロック」と呼ばれるモニュメントがお目見え。両端から手を入れて鐘を鳴らせるようになっており、カップルなどに人気だ。足元の石畳にはハート型の石も隠れているので、2人で探すもの楽しみのひとつ。また、奥には願い事を書いた絵馬を掛けられるスペースもある。駐車場敷地内に売店があり、絵馬やお守りを購入できるので、棚田へ行く前にチェックしておこう。さらに玄海町地域振興会では、棚田での手作りの結婚式も推進している。結婚を控えたそこのアナタ、「恋人の聖地」で永遠の愛を誓いあってみては?


「らぶ絵馬」に想いを託そう♪

近くの売店ではお守りも販売中!

手作りの結婚式も挙げられる!

棚田をバックに愛を誓い合おう♪

棚田の今


「浜野浦棚田保存会」の組合員は現在浜野浦区の集落39戸中13戸。棚田のある地区では良くある話ではあるが、高齢化・後継者問題が浮き彫りになっている。棚田はその形状から機械が入りづらく、手作業での耕作が難しい。そのため高齢化に伴い耕作をやめてしまう農家が増えているのだ。実際、昔よりも耕作放棄地が増え、景観も少しづつ変わってきている。今後5年・10年先までこの原風景を維持できるかが大きな課題だ。もちろん、そもそも棚田は米を作る場所で、景観美のためにある訳ではないが、少しでも長くその美しさを保って欲しいものだ。


今回案内をしてくれたのは、玄海町地域振興会の青木 一里さん
名称

浜野浦の棚田

住所

東松浦郡玄海町大字浜野浦

問合せ

玄海町地域振興会

TEL 0955-51-3007

駐車場

39台(道路を挟んで反対側)

fb

https://www.facebook.com/hamanoura

アクセス

唐津駅から車で約30分