2018.9月号
ナビゲーター/SAKI & NATSUKI

陶房 花泉窯で花器作りに挑戦



朝10時。武雄市山内町の陶房・花泉窯にやってきたNATSUKIとSAKI。今日は、NATSUKIが門下生でもある、いけばな草月流福岡県支部の若手の皆さん(SYC)と一緒に、花器作りに挑戦だ。

花泉窯さんは、全国の華道家さんたちから注文を受けて作る花器専門の窯元さんで、ギャラリーにはさすがに色んな種類の花器がズラリと並ぶ。二人とも美しい花器たちを前に、今日の作陶のイメージを膨らませた。

さぁ、果たしてどんな作品ができるのだろうか・・・?

草月流福岡県支部 SYCの皆さん


今回、快く取材をお認め下さった草月流福岡県支部の皆さんと、花泉窯の山田先生と奥様先生。本当に良い方々ばかりでした。作品作りのお邪魔をしてしまって、大変すみませんでした~。でもご一緒出来て楽しかったです! 皆さん、ありがとうございました。


■草月流とは?
池坊、小原流と並ぶ日本3大流派の一つ。草月流いけ花最大の特徴は「個性」。型にとらわれず自由にいけることをモットーにしている。
「花のピカソ」と呼ばれた初代家元 勅使河原蒼風が1927年に創始。現在は4代目の女性家元 勅使河原茜のもと「草月流いけばな」は、全国各都道府県に49支部、世界120支部に展開している。
■SYCとは?
草月ヤングチャレンジャーズ。草月流いけばなを習う40代までの若手グループ。
(草月流は90歳を超えてもなお現役でご指導されている大先生がたくさんいらっしゃるので40歳でもまだまだ若手なんです!)SYC福岡3は現在30名のメンバーで活動しています。

福岡県支部長・片山紅早先生
  • 大変親切で、色々とお気遣いいただきました。

福岡SYC3(草月ヤングチャレンジャーズ3)代表  桑原道子さん
  • 今回参加のきっかけを作ってくださった方。すごくお世話になりました。

NATSUKIといけばな


私がいけばなに初めて触れたのは中学生の時でした。以来お花をいける楽しさに目覚め、大学4年間は池坊という流派で、社会人になってからの4年間はご縁あって、現在の草月流片山紅早先生に師事しています。草月流いけばなの楽しさは何と言っても「自由」度の高さ。基礎はもちろんありますが、そこから先は自分の好きなようにお花を楽しむことができます。「どう楽しむか」「どうしたらもっと面白くなるのか」を常に考えてお花をいけています。(ついつい独創性を追求しすぎる傾向にあります。笑)


花器作り開始



まずは、花器作りの要領を山田先生から教えていただきました。

次に、土の板から作りたい型を切り取ってパーツに分けます。NATSUKIはワインソムリエでもあるから、それにちなんだものを作りたいと考えていた模様。頭の中で試行を巡らせます。

切り取ったパーツで、形を組み合わせ始めました。

九州が大好きなSAKIは、九州をイメージできるものを作りたいと思っていた感じ。

開始からおよそ90分後


SAKIが作ったのは、上から見ると九州の形をした花器。

なかなかの力作です。最初のコンセプトを貫き通したところが凄いですね。

【NATSUKI】
今回の花器作りを通して


 


私は普段ワインのソムリエとして働いているので好きなワインとお花で自分の世界を表現したいと思い、ワイングラスのモチーフの花器を作りました。 先生のアドバイスを伺ったり、他の人の作品をこっそり見て真似したり、美味しいランチでリフレッシュしてやり方を変えてみたり・・・3時間近く試行錯誤の上、納得のいく形に仕上がりました!

成形において大変だったのは

  • 土の重みもあり、なかなか自分の思い通りの形にならなかったこと。(グラスの丸みを出すのが難しかったです。)
  • 脚の部分、細いところが折れないように補強をしたこと。
  • 花器なので水が漏れないように裏面まで気を配ること。

の3点でした。
また、デザインで工夫したのは「面白さ」。あえて普通のワイングラスではなくステム(脚)を折り、ボウルの部分には割れ目を作り、そこからお花が飛び出てくるようにお花をいけられるデザインにしました。花器というよりアート作品のようになってしまいましたが、きちんと水が漏れないような設計にしているので花器として活用します。また余った土で、飼っているうさぎの餌箱を作りました。これは本当に花器とは関係なく、勝手な趣味ですがとても楽しく作品づくりができて大満足な1日でした! 陶芸を一度でもしたことがある方はご存知かもしれませんが、自分が作った器でご飯を食べるといつもより美味しく感じるように自分で作った花器でお花をいけると生け花がもっと楽しくなるのではないかと思います。私もどんなお花を生けようか考えていて、花器が届くのがすごく楽しみです。貴重な体験をありがとうございました!


陶房・花泉窯について


華道家の期待に応える大胆な造形
三代目窯主 山田富士男さん


24年前に先代であるお父さんより後を継ぎ、奥様と二人で作品作りに勤しんでいる。かつては、薪や石炭を使っていた時代から、今ではガス窯で焼くのが主流だそうだ。約65年前に開業した花器専門の窯元・花泉窯さん。草月流さんの他に池坊など、あらゆるいけばなの流派に対応して作陶している。山田さんが言うところの花泉窯の作風は「自由」。

そう言うだけあって、ご自身の性格はかなりフラットで話しやすい感じ。だから、「こんな花器作って欲しい。」というザックリとしたオーダーに見事に応えているので、華道家さんたちからの信頼が厚い。人とのつながりを最も大事にしている山田さん。ビジネスライクに花器を作るのではなく、「できる限り依頼者のリクエストに応えたい」と笑顔で語ってくれた。一番印象深かったのは、山田さんは紛れもなく陶芸家だが、周囲の人々からは陶芸家とは呼ばれたくない、と言い切った時だった。


工房の様子



もう一人の先生として活躍する奥様。

花泉窯で使用する釉薬は約50種類もある。

ろくろを回す山田先生の背中からにじみ出るオーラを感じる。

昔ながらの灯油窯。

この窯の最高温度は1,260度。25時間焼き続けるのだそうだ。

なるべくして後を継いだ山田先生だが、そのお人柄はとても明るく楽しい。

こういう風景を造形美、と呼ぶのだろうか。

山田さんが、花器用にろくろを回して作ったもの。

平成元年にできたガス窯。
名称

花泉窯

住所

武雄市山内町大字宮野23451

TEL

0954-45-2059

HP

☞ 花泉窯ホームページ

アクセス

武雄北方ICより車で約25分

JR三間坂駅より車で約5分