売れようが売れまいが、自分が信じたものを作っていきたい。


次期四代目・専務・杜氏
小森 賢一郎さん
今三代目社長である小森さんのお父様は74歳。賢一郎さんは実質的な当主の職についている。こんな時代だからこそ、守りながら生みだしていくという難しい状況を見据え、将来に前向きに挑んでいく姿勢がなんとも頼もしく感じられた。案内してくれているときはとっても気さくで、明るく優しい。しかし、ひとたび酒造りに入ると妥協を許さない職人さんなのだろうと思った。現在、佐賀県内には27件の酒蔵があるが、佐賀西部が多い。東部は基山商店と天吹の2件。どうかこの伝統を守り、かつ未来へつないで欲しいと願った。

酒蔵見学
美味しい日本酒の出来上がり方

最大50%まで削られ不純物が除かれたお米を使用

その米を蒸して酵母と合わせ麹を作る、ここがミソ

杜氏=小森さんのお仕事


杜氏(とうじ)とは酒造りの親方。各種工程の指示だしやまとめ上げをする人。毎日分析して、成分を見て温度管理をする。温度の上りが早いと過発酵になってしまい、悪く言うと味気ないスッキリしたお酒になってしまう。ゆっくり発酵させると、味のバランスがとりやすい。酵母の動きを活発にさせるかさせないかで味が変わる。部屋が寒いほうが、他の微生物にやられにくく空気が澄んでいて、酒造りに適している。日本酒は、低温発酵でフルーティーな香りになる。酵母菌によって味が深くなるもの、香りがするものと変わってくるという。
酒造りは10月に仕込み始め、5月頭で搾り終わる。夏場、酒造りが終わったら、お客さんとのコミュニケーションや営業に回る。小森さんは研究も兼ねて、お酒は自分のところでなくても毎日飲む。他の蔵の商品当地の商品を比べて味わったりもしている。1シーズンに使うお米の量は12000キロ。この量のお米からできる商品は、一升瓶にして約2万本。
 
小森さんが作りたいお酒=「言葉ではうまく言えませんが、口に入れたときに澄み切ったきれいな水を感じて、優しい甘みが広がり、スーッと消えていくお酒を造りたいと思う。
ワインはブドウの出来で8割味が決まる。でも日本酒はお米が良くても悪くても、水の量など細かい調整で味が決まる。素材の水、柔らかい軟水を使っている。さらにお米の持ち味が大切。いいお水じゃないといいお酒が出来ないし、いいお水だと作りやすくもある。毎年、同じ味に100%はできないが、同じになるよう作っている。」
杜氏としてその過程をすべて自分で差配していくのは大変な重圧だろうが、それだけにやりがいを感じている小森さんの姿を見た。


酒造りの工程


お酒を造るための山田錦50%米。
 50%というのは精米具合。玄米を 100%とすると、 50%の精米具合。普段口にしている白米のお米は 7%くらいしか精米をしない。このお米は粒も普通のお米に比べて小さい。外側のたんぱく質や脂肪分がお酒の苦みなどになるので、最低でも 3割程度は削っている。大吟醸になると 6割~ 7割削っている。

米を蒸す。
お米を洗った後は次の日に蒸している。大雑把に言うとせいろ蒸しにしている。釜には、 550キロのお米が入る。冷ましたら、タンクに移す。

麴室。
麹を繁殖させる。温度は一番繁殖しやすい 35度。ここに入るときはしっかり消毒して清潔にして入るように、特に気をつけなくてはならない。麹室には 2日間、蒸し米を寝かす。麹室から出したばかりの麹は、お米の粒に白い麹菌がたくさんついていた。  米 1トンに麹を 200キロ使用している。

酒母室。
仕込みの状態で、酵母菌を育てる工程。このタンクに蒸したお米、麹、水を入れ、約 180リットル、 60キロ弱入っている。酒母が出来上がるのが 3週間。酒母室で発酵を始めたばかりのものはお米の香りしかしないが、 9日目のタンクはお酒のアルコールの香りが、ぷんぷんする。氷水で冷やして、ゆっくり発酵させている。冷やさないと発酵温度が 30度を超えて酵母菌が死んでしまう。
発酵熟成。
33日に仕込み終わった、大きいタンク。
3000リットル弱入っており、 2500リットルくらいのお酒ができる予定。一升瓶に直すと 1400本くらい。菌が働きやすい状態を保っている。タンクについている黒い帯状の物は温度管理をするもの。 6度くらいの冷水を通して、発酵するように。顔を入れすぎると危険!発酵するとき二酸化炭素をだすので空気がない状態。昔の酒造りの場では、空気気絶して落ちてしまい、亡くなってしまうケースもあった。

搾る。
ポンプで機械に入れて、プレスして搾りとる。ゴムと金属を交互に入れ、コンプレッサーで空気を送り搾る。コンプレッサーは 40年使っている。粕袋にもろみを入れて圧力を加えず、自然に流れ出るお酒を搾り取る方法もある。

酒粕。
お酒を搾る取られて残ったものは 5mmくらいの厚みの酒粕。人によっては炙って食べる人もいるそうだ。ドレッシングにする人もいる。小森さんのお母さんはよく粕汁を作ってくれていたとのこと。タンクに漬け込み、酵素が残っているので粕漬けの素になる。

一番搾り原酒。
ここから加熱殺菌などの処理の仕方で、様々な種類のお酒へと枝分かれしていくのだ。

ここから、お酒 40種を作っている。3年前IWCで金賞をとった。今年の出品でも受賞作を作りたいと小森さんは仰った。サガリッチも応援してます!

ギャラリー


Gallery Key「基肄の蔵」


日本酒と関係なくライブやイベントが行われている。基山に酒蔵があると知らない人が多い。これをきっかけに知ってほしい。

貸出し 1時間 3000円。
インタビュー

東京からワーキングホリデーに来ている25歳の細谷さん。


感想を一言
九州には初めてきた。九州のお酒は甘いと聞いたことがあった。来てまだ1週間だが、お酒を造るのにこんなに手間がかかるんだと驚いた。東京では酒蔵で働く経験が出来ないと思うから、それを知れただけでも自分にとって大きい収穫。基山の人はフレンドリーで、自然もあって好き。
これからも、がんばってくださいね!

名称

合資会社 基山商店

住所

三養基郡基山町大字宮浦151

TEL

0942-92-2300

営業時間

8:00~17:00

定休日

土・日・祝

駐車場

約10台

HP

http://kihotsuru.com

アクセス

JR基山駅より徒歩6分

筑紫野、鳥栖インターから車で10分