ナビゲーター/SAKI&CHISATO
ライター/Momoko Tominaga

肥前吉田焼の特徴


独特の水玉模様を特徴の肥前吉田焼。

肥前吉田焼の起こりは、天正5年(1577年)、吉田村を流れる羽口川の上流、鳴谷川の川底で、白く光る石を発見したことに起因。豊臣秀吉の朝鮮出兵の折、多くの朝鮮陶工を連れ帰った佐賀県藩主・鍋島直茂は、慶長3年(1598年)にそのうちの1人を吉田へ送り、陶磁器を作らせた。享和年間(1801~1804年)に入るとさらに事業は拡大し、食器などの生活雑器を中心に肥前吉田焼は繁栄し、明治時代には旧士族を中心とした陶器製造会社「精成社」が設立され、中国や朝鮮へ販路を拡大していった。この400年以上の歴史を持つ「肥前吉田焼」は今もなお素晴らしい窯元たちによって守り続けられている。(肥前吉田焼HPより引用)

戦後は、嬉野茶を特産とする地域の特性を生かした茶器を製造する窯元も多く、昭和の食卓の象徴のような水玉模様の急須や湯のみは、肥前吉田焼の代表的な商品の1つだ。現在では吉田焼独特の藍色だけでなく、色彩豊かなパステルカラーの皿や急須も作られている。

また吉田地区の窯元前の通りは、嬉野市との協力で焼き物の街ならではの情緒あふれる街並みとなっている。有田や波佐見と比較すると小規模だが、だからこそ街全体の雰囲気を一挙に味わえるのだ。

肥前吉田焼 副千製陶所
三代目窯元副島 謙一さん



窯元の息子として生まれた副島さんは若くして継ぐことを決意し、有田工業高校を卒業後、行儀見習いを兼ねて東京の陶器販売店に就職、販売を担当した。25歳の時に副千製陶所へ戻り、46歳の現在、3代目として製陶に奮闘する毎日だ。
後を継ぐことに確かに不安はあった。現代はモノがなかなか売れない時代、それに加えて物価の上昇、食器類が安価に手に入る販売店も多い。そんな世の中で従業員を始め、肥前吉田焼の伝統を守っていかなければいけないという責任感は計り知れない大きさだろう。 
ところで、肥前吉田焼の窯元はオープンファクトリーを導入している。製陶にかける手間や職人が働く様子を見学してもらうことで商品の価値を認識してもらい、来てくれたお客様に肥前吉田焼のファンになってもらいたいと副島さんは語る。
モノづくりの魅力とは、試行錯誤を繰り返し、面白いもの・綺麗なものが完成した時に、自分自身も楽しいし、お客様も喜んでくれるところ。しかし、その工程は一筋縄ではいかない。例えば、工房は温度管理が難しく今年の冬は工房内が-4度まで冷え込み、鋳込みに使う自社製造の生地がタンク内で凍ってしまう事態に陥ったという。一方、夏場は乾燥が早く接着が間に合わなくなってしまうこともあるそうだ。冬場の従業員の手のかじかみや、夏場の体の疲れなどといった季節によっての対応が必要だ。故に、工房内の環境整備と合わせて労働環境も改善していかなければと窯元ならではの悩みも教えてくれた。

商品は70~80種類。伝統的な藍色の水玉模様に加え、今年はカラー商品に力を入れている。工房内ではカラーが増えることによってお客様が商品選びに迷うこと、その分ロスが大きいことがデメリットとして挙げられたが、カラーバリエーションによって選ぶ楽しさが味わえるというメリットを優先した。自分のところが持っている技や術が何なのか、それをどのように活かしていくのかを突き詰めることで、新しい可能性を見出していく。今後の動向が楽しみで目が離せない。

えくぼとほくろ


「えくぼとほくろ」とは吉田皿屋地区にある6窯元の工房内にある規格外商品を販売しているショップ。職人が一つ一つ丁寧に作ったにもかかわらず、生地や釉薬に含まれている鉄分が表に出てきて、黒点(ほくろ)になることがある。この産地では、そういった規格外の商品を愛情込めて「えくぼとほくろ」と名付け、定価の20~50%OFFで提供している。
ただ、驚いたのは窯元工房内の見学ができること。普段はなかなか入ることのできない工房の中を、窯元自身が案内してくれるのだ。焼き物がつくられる工程や職人の手仕事、古く味のある工房内を見学することで、商品の見え方がガラリと変わる。


見学はご希望の際は窯元のスケジュールがあるので事前予約がオススメ。

工房内の様子


肥前吉田焼は、石膏の型作り→機械ろくろ・排泥鋳込み・圧力鋳込み→素焼き→染付・転写・釉掛け→本焼成→上絵・上絵転写→上絵本焼成という工程を踏んで完成する。

これは土瓶急須のボディーを作る為の排泥鋳込という工程。石膏で作られた型に生地を流し込み、時間を置くと石膏と接している部分の水分が石膏に吸収され、薄い皮が出来てくる。

石膏が水分を吸うと型自体が痩せたり変形するため、1つの型から作られる商品数は約100個。精度を要求されるものは数十回で廃棄されるという。出来た薄い皮が既定の厚さになると、中に入っている生地を流して裏返したまま乾燥させる。これは生地が内面で垂れるのを防ぐためだ。

土瓶急須の取手部分の成形をしているところだ。集中力を要する地道な作業。しかし単純作業を繰り返す工程においては、作業中に仕事以外の別のことを考えられる能力が求められると副島さんは語る。歴57年のベテランさんは今日の夕食の献立を考えながら作業に勤しんでいた。

これは色を付けない部分をマスキングするためにロウ付けしているところ。

吉田焼の特徴である水玉模様にもロウが塗られ、着色されたのちに水玉になる部分を削り出す。すると削った部分だけが丸く凹んで”影“ができる。これこそが吉田焼独特の味を生み出しているのだ。

仕上げの絵付けだ。ここでは削った水玉部分に色をつけたり、上絵を書いたりする。

ここには焼成を待つ商品がズラリ。釉を塗り本焼成すると表面がガラス化する。まさに焼き物とはまさに化学変化なのだ。

本窯で1260~1280度、15~16時間かけて焼き上げて完成。

副千製陶所ギャラリー
吉田茶室



ドアを開けた瞬間に立ち込める畳の香り。ここは副千製陶所角の小屋をリノベーションした「副千製陶所ギャラリー/吉田茶室」。嬉野茶時の”茶畑でお茶を飲む“というイベントが嬉野の至る所で開催されており、そのイベントにおける吉田の拠点となる場所として、この場所に茶室が設けられた。嬉野茶時とは、嬉野が何百年もの間、 受け継がれている歴史的伝統文化「嬉野茶」「肥前吉田焼」「温泉」を、上質な空間と 4つの季節で表現するプロジェクトのこと。

ブランドギャラリーとして1級品のみを展示しているこのギャラリーは、一般の方に開放されている訳ではなく、嬉野茶時のイベントや茶農家への招待客の接待時など限られた人しか利用することのできない特別な場所なのだ。

併設されている茶室は、その嬉野茶時とコラボレーションした特別な部屋。竹で誂えられた壁面と藺草が香り立つ畳が作り出す、洗練された和の雰囲気が心に癒しを与えてくれる。
名称

有限会社 副千製陶所

住所

嬉野市嬉野町大字吉田4116-14

TEL

0954-43-9704

営業時間

8:00~17:00

店休日

日曜

駐車場

20台以上(窯元会館)

HP

http://www.ktknet.ne.jp/yoshidayaki/

アクセス

嬉野ICより車で約20分

JR肥前鹿島駅より車で約20分