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MICHIKO’S BLOG

2020年4月10日

≪第16話≫
ファッションも情熱、商いも情熱・その①


おかげさまで、モードファッショングループは昨年、70周年を迎えました。「よく70年も続けてこれたなあ」とそのわけを考えますと、やっぱり「鹿島だったから」という答えに行きつきます。お店を出したのがもっと大きな町……たとえば佐賀市や福岡の博多だったら、こんなに長くは続けられなかったと思いますね。
現在、モードは18店舗、すべて佐賀県内にございます。鹿島に路面店が4店舗と、ショッピングセンターに4店舗。佐賀市の駅前に路面店2店舗と、ショッピングセンター2か所に4店舗の計6店舗。それに加えて武雄市のショッピングセンターに4店舗です。
とくに人口3万人の鹿島市内では、各年代層とお好みのファッションに合わせて店舗を展開して、お客様のご要望に広くお応えするようにしております。2019年から、海外ブランドの一流商品をお届けするインターネットショップ「ZOOit」も始めました。

昭和43(1968)年、鹿島市高津原にモードの本店であるサロンモードをオープン。
以来50年余り、同じ場所でモード本店は営業を続けている。

人口の多い場所は、確かにお客さんも多いですが、そのぶん競争も激しくなります。うちは元手が大きくなかったので、大きく打って出られませんでした。それでかえって、「自分たちの目の届く範囲で商売をしよう」という方向が、いろいろな経験を失敗も含めて積み重ねるなかで、会社の方針につながっていった。
鹿島で始めたモードを鹿島にずっと置き続けている――これまで70年続けてこれた秘密はそこにあるように思います。

編み物教室には芦屋から講師の先生をお招きして


前回までは洋裁のお話をいたしましたね。
昭和30年ごろから佐賀や鹿島にも洋裁学校ができてきましたので、私たちもモードNO2では洋裁手芸用品を扱い、モードNO3では毛糸の販売と婦人服のオーダーをしていました。編み物教室も開催して、これにはNO2の2階を使っておりました。 

毛糸専門店&オーダーのお店、モードNO3。
NO3の店内では、編み機の実演をしていた。

講師には兵庫県の芦屋(あしや)から女性の先生をお招きして、学期中は住み込みで生徒さんたちに教えて頂いてたんです。機械編みが流行り出した頃でしたので、NO3のお店にも編み機を置いて実演して、編むところをお客様に見て頂くようにしていました。毛糸だけを売るのではなく、編み物の技術も一緒に、お客様に広めておりました。

モード編み物教室の新学期のお知らせの葉書が出てきましたよ……。
「暑い夏も過ぎ、虫の鳴き声の訪れと共に秋がやって参りました。早いものです。皆様と共に机を並べて編み物を始めたあの日から丸一年……春の日、皆様と共に蟻尾山(ぎびざん)で遊んでお別れして約半年、嬉しかった思い出、楽しかった思い出、いやだった思い出、寒かった思い出。今年もまた9月10日から始めます。先輩の皆様また一堂に会して昨年の思い出話の会を致したいと存じます。
是非是非の御来院のほどお待ち致します。

モード店主 敬白

  期日  月  日  時
  モード編物教室にて」
蟻尾山というのは、鹿島市内の山で、いまでも小学生たちが遠足に行く親しみのある場所です。モードの編み物教室の参加者の皆さん、講師の先生とも遊びに行きました。山には芳雲亭(ほううんてい)という日本家屋がありましたので、ここで一休みして、お昼をみんなで頂いたり。

モードの社員旅行。太良町の名物竹崎カニを楽しむ。前列左から2人目が夫・四郎、長女・麻貴、道子。カニの足を持っているのが長男・秀行(昭和30年=1955年頃)。

お子さん連れの方もいらっしゃいましたが、このときのお子さん方が大きくなって、高校生になって家庭科の授業の材料を買いに来られたり、結婚されて、赤ちゃん用の毛糸を買いに来られたり、2代、3代とお付き合いが続いている方も沢山いらっしゃるのが嬉しいですね。
またべつの機会には、市内の桜の名所、松陰(まつかげ)神社に生徒さんたちとお花見にも参りました。

みんなが「今年の流行」を身にまとった時代


いまはファッションというと、みなさんそれぞれ、自分が好きなものや似合うものを選んで着ておいでですが、この時分のファッションには〝流行〟がはっきりとあって、みんなが一斉にそれを取り入れていたんです。「みんなが同じ恰好しているなんておかしい」と思われるかもしれませんけれど、日本人が洋服を日常着として着始めてから、まだ時間が経っていなかったせいもあるのでしょうか、新しいデザインや素材をみんなで楽しんで着たり、自分の手で作ったりするのがファッションとのお付き合いのあり方でした。

新発売の毛糸の紹介を兼ねて、その糸で編んだ作品を紹介するモードの講習会も人気があった。

モードでは、季節ごとに売り出される毛糸の説明や、それを使ったセーターやベストなど作品をお見せしながら、編み物の講師の先生がお客様にお話をする講習会を定期的に実施していました。
毎回、数十人の方たちが聞きに来られました。モードの洋裁部、「7号」と呼んでいた縫い子さんたちが作業する清川の和室を講習会場に早変わりさせて……。作品を実際に着て、お見せするモデルはうちのスタッフたちが務めました。

ファッションショーは大盛況!


お客様に流行のスタイルに関心をもって頂き、自分が着なくてもいろんなお洋服を見てもらおうと、いまでいうファッションショーも試みておりました。これは大盛況で、みなさん、流行のお洋服を食い入るように見つめておられました。場所は、清川の結婚披露宴や大宴会に使う百畳敷きの大広間です。こちらに大勢のお客様にお集まり頂きました。

モード主催のファッションショー。
モデルさんが登場するたびに、みな食い入るように見つめる(清川の大広間にて)。

ファッションは見るのも楽しみです。ショーには専門のファッションモデルの方をお願いして、博多から2、3人、来てもらっていました。昭和30年ぐらいには職業モデルが九州でも働いていたんですよ。
モードのファッションショーは、一回のショーが一時間と少しぐらいだったと思いますが、モデルさんたちが流行のスタイルを着こなす姿は本当にすてきですし、目の前で見ると、憧れますよねえ。自分が着なくても、見ることでファッションの勉強にもつながります。
お客様にファッションの知識と良し悪しを見極める目を持って頂くことは、お店を長く続けていくうえで、本当に大事だと思います。その店がちゃんとしたものを扱っているかどうか、理解して頂く手がかりになりますので。
   

インタビュー・文 樋渡優子
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