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MICHIKO’S BLOG

2020年4月30日

≪第18話≫  ファッションも情熱、商いも情熱・その③
モードの理念は「店がブランド、人がブランド」


私たちモードファッショングループは、会社のモットーとして、
一、店がブランド、人がブランド
一、BIG(ビッグ)より、GOOD(グッド)
を掲げております。
一つめは、モードは単に有名ブランドの服を売るお店、というのではなく、モードの店舗一つ一つがブランドとなるように、また、お客様お一人お一人、モードの社員・スタッフの一人一人がブランドであるよう心して働きましょう、という意味。
二つめは、お店や会社の規模が大きいことを目指すより、お客様や社会にとって、良いお店であるよう目指しましょうという心がけを表しております。こうした目標や、指針となる標語は、主人や社長の山口健次郎が考えたり、聞いたり読んだりした優れた言葉の中から、モードにふさわしいものを採用してきました。

女学校の頃から好きな書道を生かして、会社の指針となる言葉を筆で書いて、社内に貼り出している。

モードにふさわしいものを採用してきました。私は「書」が好きですので、それを筆で紙に書いては、社員や自分たちの目につく場所や、お客様をお通しする応接スペースなどに貼り出しております。

日本中の小売業者が集まって勉強した商業界ゼミナール


私が主人とモード洋品店を始めた70年前、日本は長い歴史の中で出会ったことのないような社会と経済の大きな変革期に当たっていました。西洋のファッションや文化が私たちの生活に入ってきたこともその一つですけれど、新しい時代に則した経済の考え方や、実践的な経営が次々に入ってきて、それを学ばなければ、「これからの時代についていけない」と痛感していました。

ファッションも経営も日本が新しい世界の荒波にもまれた時代に、日々懸命に働いた。

それで主人は、「商業界ゼミナール」という日本全国の小売流通業者の勉強会に出掛けていって、勉強させて頂いておりました。私も時々、参加いたしましたが、年1回、箱根の小涌園など温泉旅館やホテルに泊まりこんで数日間、みっちり最新の経営について勉強をする。各分野の最先端で活躍されている専門の先生方のご講義を聞く、という本格的な内容でした。
参加者は2千人、3千人と数多く、うちもそうでしたが、みなさん、「何かを学んで帰ろう」と真剣でした。行き帰りの交通費に宿泊代、ゼミナールへの参加費を考えると、決してお安くありませんでした。

社会のためになる正しい商いを


昭和26(1951)年に始まった商業界ゼミナールは、いまも続いているんですよ(注:インタビュー後、商業界ゼミナールを主催する株式会社商業界は2020年3月事業を停止)。創設者の倉本長治先生(1899〜1982)は、「店は客のためにある」という哲学を説かれていました。なかでも「商売十訓」は、商業界ゼミナールが目標に掲げる、商人としての正しいあり方の教えです。モード本店の応接スペースには商業界ゼミナールの商売十訓の言葉が貼ってあります。
 
「一、損得より先きに善悪を考えよう
 二、創意を尊びつつ良い事は真似ろ」 
自分の独創性を大事にしながら、他人の良いところはためらわずに真似しなさいということですね。
 
「三、お客に有利な商いを毎日続けよ
 四、愛と真実で適正利潤を確保せよ」
四は、たとえ儲(もう)かるからといって、適正でない利益を得ることは商人としてしてはいけないことだという戒めです。
 
「五、欠損は社会の為にも不善と悟れ」
これは自分の商いを赤字にするのは、社会にためにも良くないことと心して、努力して赤字を出さないよう努めなさいという教え。

「六、お互いに知恵と力を合わせて働け
 七、店の発展を社会の幸福と信ぜよ
 八、公正で公平な社会的活動を行え
 九、文化のために経営を合理化せよ
 十、正しく生きる商人に誇りを持て」
 
どうですか? いま読んでも「その通り」「なるほど」と思われるのではないでしょうか。

必死に動くからこそ、知恵が出てきます


亡くなった主人は前にもお話ししました通り、新しいものが好きですから、商業界ゼミナールで学んだ最先端の経営知識を持ち帰って、鹿島や佐賀の経営者たちにも伝えようと毎回、張り切って参加していました。現社長の山口健次郎は娘婿ですが、前の会社、マイカル(株式会社ニチイ)にお勤めしていた頃、商業界ゼミナールに参加していたんですよ。これは娘と結婚してからわかりました。
「類は友を呼ぶ」ではないですけれども、仕事をしていく上で、正しいと思う根本のところが一致しているのは、とてもよいことだと思います。
モードは鹿島の小さな店ですけれど、「田舎だから出来ない」とあきらめてしまうのではなくて、どうしたら社会の動きと店の歩みを合わせていけるか、主人も私も一生懸命、考えていました。年に一回でも、商業界ゼミナールのような全国的なお集まりに参加して、全国の同業の方たちと肩を並べて、一緒に勉強できたことが大きな励みになりました。

地方にいてもファッションの楽しさは伝えられる。その心は今日もモードファッショングループに引き継がれいてる。

ファッションも商いも、情熱や毎日続けていく熱心さが大事ですね。ムダに長生きをしております私の経験ですけれど、人は恵まれているから知恵が出てくるのではないんですよ。毎日が大変で、「何とかしなければ」とあれこれ手を打ったり、精一杯、動いたり考えたりしていると、そのうちよい知恵がぽこっと出てきます。やっぱり必死にならないと、頑張る気持ちも知恵は湧いてこないものかもしれませんね。
   

インタビュー・文 樋渡優子
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