SAGARICHがお届けする
パーソナルストーリー
TOP | MICHIKO'S BLOG | episode32

MICHIKO’S BLOG

2020年9月18日

≪第32話≫家族が語る東島道子③
祖母はなんでも受け入れる穏やかな人
僕の新しいもの好きは祖父のDNAです


山口賢人<㈱モードファッショングループ専務>

東京から鹿島に戻って、祖母や両親と一緒にモードで働くようになって、7年になります。2019年はモードファッショングループ70周年にあたる年で、一年を通じて、皆さんに〝ファッション×アート〟を思い切り楽しんで頂けるイベントをいろいろ企画しました。その準備中に、僕が生まれるより前のずっと昔の話を祖母から聞く機会がありました。
イベントで壁に展示する写真を選ぶために、古いアルバムを見ながら聞いた昭和20年代の話は知らないことだらけで、とても面白かった(笑)。「これは残しておかなければ!」と思いました。

山口賢人さん。パリの凱旋門をバックに。

僕は子供の頃から、祖母や父母が店に出て、毎日一生懸命、働く姿を見て育ちました。家での会話も大体が、お店のことやビジネスのことですから、祖母の言葉や考え方は自然と伝わってきています。「では、僕の子供たちの世代はどうなるのだろう?」と考えたときに、僕のように祖母の言ったことを覚えているのは無理でしょうね、まだ幼稚園生ですから。
うちは長く勤めている社員が多いんですが、近頃は新しく入ってきたスタッフも増えていて、いまのモードの姿しか知りません。祖母や祖父がわずか3坪の店から、どうやってここまでモードを続けてきたか、祖母の話を文字に残すことは、70周年を迎えた会社の今後にとって、とても意味があることに思えました。

祖母はなんでも受け入れる人


祖母はお店にいるときも穏やかですが、家でも同じで、いつも穏やかなんです。若い時に外国で暮らしたことがあるせいか、家族と外に食べに行っても、韓国の焼き肉料理もネパール人の作るインド料理も抵抗なく、美味しく食べています。僕が連れてくる外国の人に会っても自然に接していますし、そういう意味では何でも受け入れる人ですね。
2019年は年明けから、佐賀新聞やアパレル業界紙の繊研(せんけん)新聞に、「97歳で現役!」と祖母を取り上げる記事がいくつか出ました。そこから東京のラジオ局(東京FM)が祖母を取材に来られたり、繊研新聞を見た千葉と広島の方が、はるばる鹿島に祖母を訪ねてみえました。
片方の方は総合衣料関係の会社をされていて、86歳になるお父さんが「97歳まで現役とはすごい。この方に会ってきなさい」と言われて、お子さんたちが鹿島まで来られたんです。

東京FMのラジオ番組「ホンダスマイルミッション」のかわいい自動車が 鹿島のサロンモード本店に到着(2019年2月)。左からパーソナリティのルーシーさんと道子さん、賢人さん。
道子さんと賢人さん。サロンモード本店にて。

マスコミの取材を受けるなんて、祖母は初めてなんです。なのに、ふだんと変わらない調子で、落ち着いて受け答えしているし、質問に答えるのも上手。70周年用に制作したビデオ撮影でも、祖母だけは一発OKで、僕と父は何度も撮り直ししましたが、改めて「ばあちゃんはすごいな!」と底力を見せられました。

祖父母の若い頃には、苦労の中の明るさが見えます


・モード洋品店は初めの頃、パンツのゴム紐を売っていた
・古下着を材料に、祖母が最後までよく燃えるアルコールランプの灯芯を作ったのが、モードの最初のヒット商品だった
なんて、婦人服飾がメインのいまのモードグループからはちょっと想像がつかないですよね? 意外性があって面白かったので、70周年の記念事業の一環として原点に戻って、履き心地のいい男性用パンツをオリジナルで作りました(笑)。

3代目の賢人さんはモードファミリーの希望の星。家族や社員・スタッフにこよなく愛されて成長した。写真左から、おじいさんの東島四郎さん、お母さんの麻貴さん、おばあさんの道子さん、伯母の靖子さんと従姉の瑞枝さん。

じいちゃんが大阪の市場に買い付けに行っても、物自体がなかったとか、戦争が終わった後も、祖父がシベリアに抑留されて、3年も帰ってこなかった、途中までは事情もよくわからなかったとか、祖母もほんとに大変だったろうと思うんです。
でも、祖父も祖母もすごく苦労しているのに明るいというか、どこか楽しそうなんです。写真からそれが伝わってきます。社会全体が活気があるというか、一生懸命努力して、生きることに迷いがないというか。
僕ら30代の世代も少子高齢化、IT化、グローバル化の波を受けて世界全体が変化していて、先が見えない不安を抱えています。祖父母が若かった時代も日本が戦争に負けて、社会も激変して、物もなくて、みんな暮らしていくのに苦労しているにも関わらず、「この明るさって何?」と興味深く思うんですね。

ファッション好きは祖母の、新しい物好きは祖父のDNA


ファッションが大好きなところは、僕は祖母と共通しています。そして、人を驚かすのが好きで、新しいものにすぐ飛びつくところは、間違いなく祖父のDNAですね(笑)。自動田植え機を作ろうと開発を始めたり、宣伝用の大きなアドバルーンを飛ばそうとしたり、ゆるキャラの元祖みたいな〝ミス鹿島〟人形を作ったり。

モードファッショングループ社員旅行のハワイで。
小学校高学年ですでに「福袋部長」と呼ばれるほど、 お正月の初売りの福袋を売るのに熱心だった。
20歳を迎えた賢人さん。早稲田大学に通っていた頃。
サロンモード本店で、道子さんとご両親(健次郎社長と麻貴さん)と。

僕が覚えている祖父は、朝、幼稚園に行くとき、敬礼して、「♬今年の新兵さんは朝寝坊。起きれと言うても起きはせぬ~」と軍歌を歌いながら僕を抱き上げて、僕の両足を自分の両足の上に載せて、二人三脚しながら、玄関まで歩いて行ってました。僕には従姉が2人いますが、祖父にとって孫息子は一人だけで、年齢も一番下だったので可愛かったんでしょう。
通っていた明朗幼稚園は、モード本店のすぐ近所ですが、祖父はこっそり僕の様子を見に来て、毎日のように塀ごしにのぞき込んだりしていました(笑)。「軍隊式で、厳しかった」と祖母や母は言うけれど、僕にはショッピングセンターPIOのスタンドで、たびたびアイスやポテトを買ってくれる、優しい普通のおじいちゃんでした。祖父は僕が7つの年に亡くなりましたが、いま若い時の祖父の写真を見ていると、自分と似ている部分を感じて、ちょっと嬉しくなります。

〝アート×ファッション〟やネットマガジンを新機軸に


祖母と一緒に働くようになって思うのは、「ゼロから店を作るってすごいな」ということです。僕は祖父母、両親が作ったベースがある中でできるわけですから、恵まれています。
祖母のエピソードの中では、戦後、祖母の実家の料亭「清川」で開催していたファッションショーの話にとても刺激を受けます。ファッションの楽しさを知ってもらうために、また、見ることでファッションの知識を身に付けて頂くために、最新のスタイルをファッションモデルが着て見せる。ご覧になるお客様たちは、食い入るようにモデルを見つめていますが、あれは僕が理想とするファッションとの関わり方です。

見る角度によって全く違って見えるアートを創作するフランスのパトリック・ルビンスタイン氏の作品にヨーロッパで出会い、2020年3月、日本初上陸を成功させた。佐賀と鹿島のモード店舗でイベントを開催。

ネットやSNSで世界中がつながれているいまは、どこにいても、ファッションが自由に楽しめる時代です。僕が始めた事業の一つ、佐賀の人も気づいていない佐賀の魅力を発信するウェブマガジン「SAGARICH(サガリッチ)」は今年4周年を迎えましたが、佐賀にゆかりのあるモデルを使ったファッション、県内のグルメスポット、魅力的な人たちについて発信しています。
アート×ファッションもいま取り組んでいる大きなテーマですが、僕自身、それまで関心のなかったアートに急速に心惹かれた経験をもとに、海外のアーティストたちの作品を選んで鹿島や佐賀で展示、販売なども試みているところです。また、全店舗の商品のオンライン販売とSNSを使ったコーディネートも今年、始めました。

ファッションを通じて、夢を伝え続ける


毎日、モードの将来を考え、心と身体を動かしているうちにわかってきたのは、祖父母が洋服を通して、みなさんに伝えていたのは「夢」だったのではないかと思うんですね。ですから、僕は朝礼で社員やスタッフに話す時は、「単にモノを売るだけの存在にはなるな」と話します。より楽しく、心地よいライフスタイルを提案し、夢をお客様に見せ続ける。それが祖父母と両親が続けてきたモードファッショングループの強みであり、お客様に求められていることだろうと思います。

賢人さんがプロデュースしたイオンモール佐賀大和での親子で楽しめるアートイベントで、
壁や床に貼った紙に一緒に絵を描く道子さんとひ孫の玲央(れお)くん。

家族で商売をしていると、時にはお互い意見したり、されることもあります。たまに祖母に向かって両親が、「お母さん、あれはダメなんじゃない?」とちょっと責められているような時も、祖母は「あら、そうだった? ふーん」とかわし方が絶妙なんです。正面から受けて立たない。とぼけているのか、都合のいいことだけ覚えているのか、そういう大らかな面も、人生の達人である祖母に学びたいところです(笑)。

インタビュー・文 樋渡優子
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 |
coming soon